2004年5月26日〜6月9日まで3週にわたって毎日新聞に連載した記事です。

字数や札響インサイダーとしての立場など、当然ながらいろいろと制限のあるなかで書いた

ものではありますが、札響の破綻が報じられ再建に着手して1年半。成果が現れ始めた

現時点での総括という意味で、書かせていただきました。

札響はこれからも続くわけですし、5年後、10年後あるいはもっと先に、あの時何があった

のか、と思い返す時の参考にもなればよいとも思います。

また、同じような状況に置かれている全国のオーケストラの方々にも読んでもいただきたい

です。

取合えず、札響の”今”を伝える意味で書きました。ご意見などお寄せいただけると幸い

です。

文章は毎日新聞のHPから引用させていただきました。紹介文などもそのままです。


ミューズに抱かれて:
文化としての札響・改革論議の向こうに/上 /北海道

 ◇企画会議に楽員も参加 寝食忘れて働いた1年−−札幌交響楽団チェロ奏者・荒木均さん

 札幌交響楽団のチェロ奏者、荒木均さん(38)が「文化としての札響−−改革論議の向こうに」と題して寄稿した。

 札響労使は4月19日、今年度から本給7%削減、退職金25%削減で合意した。「再建元年」だった昨年度の賞与カット(平均50万円)と合わせると、楽員の平均年収(一昨年約570万円)は500万円を大きく割り込むこととなり、文字通り苦渋の選択だった。

 札響の赤字はここ10年来、累々と積み上がっていたのだが、一昨年の新聞報道によって、やっと公の知るところとなった。この報道が引き金となって、監督官庁の道教委は「(借入金に依存しない)収支均衡予算」を助成金継続の条件とした。

 「長年さしたる指導もなかったのに」と恨み節の一つも言いたくなった。だが、これら“外圧”のお陰で、理事長と専務理事を代々出している北海道新聞社が札響再建に乗り出した。形骸化していた理事会も真剣に論議を始めた。

 理事会からユニオン(労働組合)に示された収支均衡案は、一方的な人件費削減に依存するものではなく、あまりにも非力だった事務局の刷新や数々の増収策を含んでいた。このため、ユニオンとしても受け入れることを決め「労使協調」による再建が始まった。

 その初年度に当たる昨年、札響は全国のオーケストラが驚くほどの改革と経営改善を実現した。

 本来のオーケストラ業務のほか、小編成のアンサンブルで学校や福祉施設、スポンサー企業の式典などで演奏。楽員参加による「企画会議」を編成し、楽員のアイデアが企画・経営に反映される仕組みが整えられた。ワークショップ形式の音楽教室の実施も特筆に値すると思う。

 新しい聴衆の開拓も始まった。ポップスオーケストラやブラスアンサンブル、ロビーや街頭コンサート……。個々の楽員がマスコミに出演することにより、聴衆との距離は確実に縮まったのではないか。

 団員一同、寝食を忘れて働いた1年だったと思う。維持・定期会員も倍増し、公演回数も激増した。「札響の社会的な必要性」を認めて寄付してくれた人々も大勢いた。大いに励まされた。マスコミ報道の宣伝効果もこの現象に拍車をかけたと思う。こうした動きの中で楽団は苦しいながらも求心力を増していった。

   ◇   ◇

 3週にわたって掲載します。次回は6月2日。

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 ◇札幌交響楽団

 1961年、札幌市民交響楽団として発足。翌年「財団法人札幌交響楽団」となった。定期演奏会や名曲シリーズのほか海外でも公演。黒沢明監督の映画「乱」のサウンドトラック収録を担当し、大きな反響を呼んだ。常任指揮者だった尾高忠明氏が5月に音楽監督に就任した。

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 ■人物略歴

 ◇あらき・ひとし

 札幌市出身。獨協大を経て東京芸大別科修了。93年入団。労働組合札響ユニオンの書記長も務めている。趣味はパソコン。ホームページはhttp://arakipage.jp

毎日新聞 2004年5月26日


ミューズに抱かれて:
文化としての札響・改革論議の向こうに/中 /北海道

 ◇オケの位置づけ論議を、市場原理だけで語るな−−札幌交響楽団チェロ奏者・荒木均さん

 楽団が文字通り一丸となって経営改革に努力した結果、札響は昨年、上期決算で黒字を確保し、下期も順調な滑り出しを見せた。

 ところが、再建がようやく軌道に乗り始めたと思っていた昨年末、道が新年度の予算編成に当たり、外郭団体への補助金を削減するという方針を打ち出した。今年度は取りあえず見送られたものの、札響も当然、例外ではない。この方針は来年度以降は実行される見通しで、それが、今年度からの人件費7%削減につながったのだ。

 すでに、賞与50万円カットや欠員の不補充など経費削減は昨年度から始まっている。そのうえでの削減であり、常識的に考えても人件費削減はこれが限界だ。オーケストラの商品は、楽団員の演奏そのもの。さらにカットが続けば、楽団員の流出を招き、人材の確保も困難になるだろう。「破たんか人件費削減か」と二者択一を迫ったところで、創設40年を経て到達した札響の演奏水準に、深刻な影響を及ぼすことは避けられない。

 オーケストラは例えば、街路樹のようなもので、一朝一夕には出来上がらない。ホールやスタジアムといったいわゆるハコ物(ハード)は建設したらおしまいで、成果が見えやすい。それに対して、ソフトに当たるオーケストラや劇団を育てるには、資金だけでなく時間が必要だ。ソフトを形作っているのは人だから、雇用しなくてはならない。雇用した側にもさまざまな責任が生まれる。だからこそ、大樹に成長した暁には価値あるものとして評価される。優れたソフトを育てた街は、文化の「消費地」にとどまらず「発信地」としての地位を得ることができる。

 日本のオーケストラは今、岐路に立たされている。オーケストラを持つほとんどの自治体は助成金を削減しており、この問題は札響に限ったことではない。札響規模のオーケストラが必要な事業費は年間約10億円。演奏会収入だけで賄うことは、到底不可能だ。オーケストラは自治体や民間、古くは王侯貴族の支えがあって初めて成立する存在なのだ。

 財政危機が表面化した札響に対し、道や札幌市が助成金継続の条件としたのは「自助努力の継続」だ。自助努力とはすなわちコストダウンと増収で、これからもその努力を続けていかなければならないのは当然だ。

 しかし、文化は「市場原理」のみでは語れないはずだ。経営努力の一方で、市場原理にのみ込まれ安易な演目を打ち続ければ、札響の価値はすぐに失墜する。そのバランスをとるのは実に難しい。

 北海道というこの土地で、文化の象徴ともなりうるオーケストラをどう位置づけていくか−−。再建論議の中心にこのテーマを据えなければならない時期は来ている。

   ◇   ◇

 次回は6月9日。

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 ■人物略歴

 ◇あらき・ひとし 札幌市出身。獨協大を経て東京芸大器楽科別科修了。93年入団。労働組合札響ユニオンの書記長も務めている。趣味はパソコン、カメラ。ホームページはhttp://arakipage.jp

毎日新聞 2004年6月2日


ミューズに抱かれて:
文化としての札響・改革論議の向こうに/下 /北海道

 ◇欠かせない地元貢献 教育・福祉活動も継続、ファンの支持が大きな力−−札幌交響楽団チェロ奏者・荒木均さん

 前回「オーケストラが存続するためには自助努力だけでなく、官民の援助が欠かせない」と書いた。札響の場合は、市民、道民から必要性が認められて、初めて成り立つ。私たちはそのために、常に演奏の質の向上を目指し、独自性をアピールしなければならない。

 札響はかつて、故・武満徹氏から「私の音楽を一番理解してくれるオーケストラ」との評価を受けた。それが、映画「乱」のサウンドトラックの収録に結びついた。例えば、ブラジルのオーケストラのベートーべンのCDは買わなくても、彼らの「ヴィラ・ロボス」なら世界中で売れるだろう。「札響の武満」もまたしかり。武満音楽に磨きをかけて主要レパートリーにし、世界に認知される足がかりとしたい。

 デュトワが音楽監督を務めたモントリオール響は、フランス作曲家の音楽を得意とし「フランスよりもフランス的」と評された。私もかつてそうだったが、札響ファンの多くは、札響にシベリウスなど北欧音楽の演奏を期待している。モントリオール響のような評価を受けるためにも、今後は北欧音楽に積極的に取り組む必要がある。

 中心となるファンだけでなく、常に硬軟取り交ぜたプログラミングを工夫し、ファン層の拡大に努めることも忘れてはならない。

 さらに、並行して進めなければならないのが、教育、福祉活動だ。

 札幌市は今年度から、全小学6年生をキタラに招待し、札響を聴く−−という取り組みを始める。これには大いに期待しているが、時代は学校のカリキュラムから、音楽の時間を削減する方向に流れている。本格編成で学校を訪問する「音楽教室」も減少している。

 そこで重要になるのが、小人数で実施できるワークショップ形式の音楽教室だ。指導する楽団員も数人ですむので、軌道に乗れば1日で数カ所実施することも可能。小アンサンブルの施設訪問も同様だ。

 こうした取り組みは始まったばかり。ファンと密接なつながりを持つことは、社会の支持を得るうえで大きな力になる。今後は主要事業の一つと位置づけ、腰を据えて取り組みたい。

 札響は6月2日の理事会で、借入金(累積赤字)を返済するため、運営基金を取り崩すことを決めた。これにより無借金経営となり、再建の大きな山場を越えることができた。しかし、今後もこの状態を維持するためには、相当な努力が必要だ。これまで以上に多くの人に活動を知ってもらい、ともに感動を分かち合いたい。そして、文化の香りあふれる豊かな郷土づくりに貢献したい。

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 ■人物略歴

 ◇あらき・ひとし

 札幌市出身。独協大を経て東京芸大器楽科別科修了。93年入団。労働組合札響ユニオンの書記長も務めている。趣味はパソコン、カメラ。ホームページはhttp://arakipage.jp

毎日新聞 2004年6月9日

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