札響が1999年度から2000年度までに行う定期演奏会22回のうち11回をかけて、【20世紀音楽ー同時代セレクション】という企画をおこなうことになりました。下の表はそのラインナップです。ご覧になって分かるように十年を一区切りとしてそれぞれの時代に書かれた曲を集めたものです。
私がこの企画をはじめて聞いたときに真っ先に「こりゃ練習たいへんだ」と思ったのが正直なところです。その後企画の意図などを聞くうち興味が湧いてきて前向きな気持ちになりましたが、やはり心配なのは集客です。せっかく「これはいい曲だ」というプログラムのときでもその曲の知名度の低さゆえお客さんの入りが今ひとつ、という時ほど残念なことはありません。ぜひ私たちが必死の形相で難曲を弾いている姿を見に来てください。
|
北海道新聞(平成十年12月18日)に掲載されたこの企画に関する尾高氏の談話です。全文を転載します。
札幌交響楽団は、20世紀に生まれたクラッシク音楽を2年間、11回にわたり紹介する演奏会シリーズ「20世紀音楽ー同時代セクション」を一九九九年四月から始める。東西の作曲家の曲を十年単位で選び出し,さまざまな指揮者が”競演”する試み。今春、札響常任指揮者に就任した指揮者尾高忠明さん(英BBCウェールズ響桂冠指揮者)が打ち出した”世紀末企画”。不協和音の目立ついわゆる「現代音楽」より、美しい旋律にあふれた作品が多い。シリーズの概要を紹介し、尾高さんに企画の狙いなどを語ってもらった。
シリーズは定期演奏会で行われ、19世紀末の音楽を紹介する「導入編」を含め,全十一回。予定されている作品は表の通り。
独,仏,米,ロシアなどさまざまな国の曲が予定されおり、日本では、故・武満徹や三善晃が入った。また英カーディフやロンドンで活躍する尾高さんの意向を反映、エルガーやブリテン、ホルストらの英国作曲家の曲も目立っている。
内容面では、音楽に民族主義・原始主義を持ちこんだストラビンスキーの初期代表作「火の鳥」(1919年),複雑なリズムに色彩感豊かな管弦楽法を組み合わせたドビュッシー交響詩『海』(05年)など”現代の古典"が数曲予定されている。また、マーラーら、他の作曲家の作品断片をコラージュのように組み合わせたベリオ「シンフォニエッタ」は三郡のバイオリンと三二種類の打楽器、電子オルガンやチェンバロのほか、八人の独唱を必要とする大曲。一方、ホルストの「セントポール組曲」、(13年)は弦楽の合奏曲。ヤナーチェク「グラゴール・ミサ」(26年)やプーランク「オルガン協奏曲」(38年)は会場となるキタラのパイプオルガンを活用するなど,さまざまな響きが期待できる。
20世紀音楽の演奏会には、日本フィルなど東京で取り組んでいるが,課題は集客。企画の狙いと魅力を上手く市民に伝え,聴衆を堀り起こす取り組みが札幌でも必要になりそうだ。
シリーズの狙いは20世紀音楽の総括。「現代音楽』としてあまり演奏されず,なじみの薄かった作品も3年後には"前世紀の芸術"になる。時代が生んだ曲を札響や聴衆のかたがたと振りかえり、新世紀を迎えたい。そして、この百年間にも素晴らしい作品が多数あったことを訴えたいのです。
企画で心がけたのは、同時期に掛かれた作品同士の対照。例えば四月の「導入編」で演奏するマーラー「交響曲第4番」とシベリウス「フィンランディア」は共に1899年の作品。2000年1月のドビュッシー「交響詩『海』」は05年、アイブス交響曲第2番は02年と、ほぼ同時代に出来ています。
音楽の印象は大きく違うので全く別時代の作品と理解している方も多い。でも同じ演奏会で取り上げれば,新鮮な響きと同時に,時代に息吹も感じてもらえる。その中で「音楽の二〇世紀」のイメージを立体的に描けるでしょう。
曲は全て演奏会を振る指揮者とぼくが相談して決めました。普段振れない曲が決まった外山(雄三)先生はじめ、みなやる気満万。僕も円光寺(雅彦)君と曲の「取り合い」をしたほどです。
技術的にはかなり難しい曲もあるので、練習体制の充実など課題はあるかもしれません。でも札響の人々と力を合わせ,成功を目指したい。北海道の人々にぜひ,聴きに来ていただきたい。音楽に触れたら目からうろこが落ちること請け合いです。